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「犬に名前をつける日」が教えてくれる、“看取り”という帰着点

「犬に名前をつける日」が教えてくれる、“看取り”という帰着点イメージ

愛するペットの死は想像もしたくない。このコラムを読まれている方の多くはそうでしょう。

近年、人間とペットの関係は大きく変化しました。単なる愛玩動物や番犬から家族同然の存在になって久しく、ペットが私達の暮らしを豊かにしてくれることは自明です。大切な家族との永遠のお別れなのですから、想像するのもイヤで当然ですよね。

しかし家族だからこそ、いずれは考えなければならない看取りについて、ペットの立場から見るとどうでしょう。名を呼ばれ、終末期に寄り添われ、最期まで肌に触れ頭を撫でてもらえたペットたちの最期は果たして不幸でしょうか。

突然ですが、日本では毎日100匹以上の命が“処分”されています。明日も明後日も処分は繰り返され、1年で3万匹を優に超える命が誰にも撫でられず、誰にもその名を呼んでもらえずに殺されます。人間を喜ばせるためだけに、生まれてきた命が。現代の日本では、飼い主の元で安らかに息を引き取る動物よりも、強制的に死に追いやられる動物の方が多いのです。

「犬に名前をつける日」が教えてくれる、“看取り”という帰着点イメージ

映画『犬に名前をつける日』は、そんな動物たちの置かれる現状にフォーカスを当て、小林聡美が主人公を演じたドキュメンタリードラマです。愛犬を失った悲しみを抱える主人公・かなみと、その元夫・前田勇祐(上川隆也)以外は実在する団体や登場人物で、本作監督の山田あかねが4年もの歳月をかけて取材した映像をベースに進みます。

飼い主はペットの命に責任を持たなくてはならない」
そんな小学生でもわかる倫理や道徳を丁寧に伝える作品です。“名前”は親が子に贈る最初のプレゼント、と言われる通り、名前をつけると云う行為は誰かの命の責任を引き受けた、と云うことに直結します。命の責任を負うとは、たいていの場合は人間よりも早く生涯を終えるペット達を最期まで守ると云うことでしょう。本作のキャッチコピーである「犬の幸せはどんな人と出会うかで決まる」は、すべての飼い主への訓示かもしれません。
かなみが抱く、亡き愛犬への悔悟の情について、元夫の前田はこう声を掛けます。
「君が最後までずっと一緒に居てくれたことが、幸せだったんじゃないかな」

私達は死を避けることはできません。
誰かを愛すれば、それが人であれ動物であれ必ず別れの苦しみを味わう日が訪れます。しかし筆者は本作を観終えたとき、必ず自らの手でペットを看取ろうと決意しました。連綿と続いた日常の終わりで「ありがとう」と伝えられる時が来たら、それはとても貴重な瞬間です。共に過ごしてきたからこそ迎えられた瞬間なのですから。

殺処分や闇処分、悪質なブリードがこれからもっと減ってゆくことを願いつつ、今視界にある幸せを大切にしようと改めて思わせてくれる。『犬に名前をつける日』はそんな映画です。よろしかったらご覧ください。

FREEDIAL:0120-426-388
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